
金を売却して利益が出たら、その利益には「譲渡所得」として所得税と住民税がかかります。2026年4月現在、金の国内小売価格は1グラムあたり2万6,000円を超え、史上最高水準が続いています。「今のうちに売っておきたい」という方も多いのではないでしょうか。年間の売却益が50万円以下なら課税されず、5年超の長期保有であれば課税額はさらに半分に。本記事では、国税庁タックスアンサー(No.3161)の内容に沿って、金売却時の税金計算・確定申告の要否・節税の具体策を2026年の最新情報でまとめました。
目次
金の売却益にかかる税金の基本ルール
金地金の売却益は「譲渡所得」に分類される
個人が金地金(インゴットや金貨など)を売って利益を得た場合、所得税法上は「譲渡所得」に該当します。譲渡所得は給与所得や事業所得と合算される「総合課税」の対象です。所得が多い人ほど税率が上がる累進課税の仕組みなので、高所得者ほど税負担は大きくなります。
国税庁タックスアンサーNo.3161にも、金地金の譲渡による所得は原則として譲渡所得に分類し、他の所得と合わせて総合課税になると記載されています。
所有期間で「短期」と「長期」に分かれる
金の売却益は、保有していた期間によって2種類に区分されます。
5年を超えて持っていた金を売ると、課税対象額が半分になります。この「5年」は購入日から売却日までの期間で判定します。
譲渡所得の計算方法を具体例で解説
基本の計算式
金の譲渡所得は、次の手順で計算します(国税庁No.3152準拠)。
ステップ1:譲渡益を出す
> 譲渡益 = 売却価額 -(取得費 + 譲渡費用)
ステップ2:課税対象額を出す
> 短期の場合:課税対象額 = 譲渡益 - 特別控除(最大50万円)
>
> 長期の場合:課税対象額 =(譲渡益 - 特別控除)× 1/2
「取得費」は金の購入代金に購入時の手数料を加えたものです。「譲渡費用」は売却時に支払った手数料や配送料などです。
計算例1:短期譲渡所得(所有期間3年)の場合
以下の条件でシミュレーションしてみます。
- 2023年に金100gを1グラム9,000円(合計90万円)で購入
- 2026年に1グラム26,000円(合計260万円)で売却
- 購入手数料:5,000円、売却手数料:5,000円
計算
- 譲渡益 = 260万円 -(90万円 + 5,000円 + 5,000円)= 169万円
- 課税対象額 = 169万円 - 50万円 = 119万円(全額が総合課税の対象)
たとえば給与所得と合算した課税所得が500万円なら、所得税率20%・住民税率10%が適用されるゾーンに入ります。追加税額は概算で約35.7万円(119万円 × 30%)です。
計算例2:長期譲渡所得(所有期間8年)の場合
- 2018年に金100gを1グラム5,000円(合計50万円)で購入
- 2026年に1グラム26,000円(合計260万円)で売却
- 手数料:購入時5,000円、売却時5,000円
計算
- 譲渡益 = 260万円 -(50万円 + 1万円)= 209万円
- 特別控除後 = 209万円 - 50万円 = 159万円
- 課税対象額 = 159万円 × 1/2 = 79.5万円
同じ税率で計算すると追加税額は概算で約23.9万円。短期と比べて約11.8万円も税金が減る計算です。

50万円の特別控除はどう適用される?
年間50万円まで非課税になる仕組み
譲渡所得には年間50万円の特別控除があります。これは金の売却益だけに使えるわけではなく、その年の総合課税に該当するすべての譲渡所得(骨董品や宝石なども含む)の合計に対して適用される枠です。
たとえば、金の売却益が40万円、骨董品の売却益が30万円だった場合、合計70万円から50万円を差し引き、残り20万円が課税対象になります。
短期と長期の両方がある場合の控除順序
同じ年に短期と長期の両方の譲渡所得がある場合、50万円の特別控除は短期譲渡所得から先に差し引くルールです(国税庁No.3152)。短期は全額課税、長期は1/2課税なので、短期から先に控除したほうが納税者に有利になるよう設計されています。
確定申告が必要になるケース・不要になるケース
確定申告が必要な人
次のいずれかに当てはまる場合、確定申告が必要です。
- 金の売却による譲渡所得(特別控除後)が発生し、他の所得と合算して申告義務があるケース
- 個人事業主やフリーランスで確定申告を行うケース
- 年収2,000万円を超える給与所得者
確定申告が不要になる条件
会社員の場合、以下をすべて満たせば確定申告は不要です。
- 年収2,000万円以下
- 給与以外の所得(金の売却益を含む)の合計が年間20万円以下
- 年末調整を受けている
ただし、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は原則として必要です。市区町村の窓口で別途申告しなければならない点は見落としがちなので気をつけてください。

支払調書の200万円ルールとは?税務署にはバレる?
買取業者には支払調書の提出義務がある
平成24年(2012年)1月施行の所得税法改正により、金地金やプラチナ地金を1回の取引で200万円超買い取った業者は、税務署へ「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を提出する義務があります。
支払調書には以下の情報が記載されます。
- 売却者の氏名・住所・マイナンバー
- 金地金等の種類・重量・数量
- 支払金額・支払確定年月日
200万円以下なら申告しなくてよい?
200万円以下の取引では支払調書の提出義務はありません。しかし、申告義務がなくなるわけではない点に注意が必要です。50万円を超える譲渡益がある場合や、給与以外の所得が合計20万円を超える場合は、確定申告が求められます。
複数の買取店に分けて売却しても、同一年の譲渡益は合計で判断されます。分割して200万円以下にする「支払調書逃れ」は、税務上の申告義務には影響しません。
取得費がわからない場合の対処法
概算取得費(売却価額の5%)を使う方法
相続や贈与で受け取った金は、購入時の価格がわからないケースが少なくありません。取得費が不明な場合、売却価額の5%を取得費とする方法が認められています。
たとえば260万円で売却した場合、取得費は13万円(260万円 × 5%)です。ただし、この方法だと売却益が大きくなり、税負担がかなり重くなります。購入時の領収書や取引明細は、金を持っている間ずっと保管しておくのが鉄則です。
相続・贈与で取得した場合
相続や贈与で金を手に入れた場合、原則として被相続人(前の持ち主)の取得費と取得時期をそのまま引き継ぎます。たとえば親が30年前に1グラム1,500円で買った金を相続したなら、取得費は1,500円、所有期間は30年超(長期譲渡所得)として計算できます。
金売却の節税対策5つの方法
1. 5年超の長期保有で課税額を半分にする
もっとも基本的な節税策です。所有期間5年超で売れば、課税対象額は短期の半分になります。同じ売却益でも税金がかなり違ってくるので、売却時期を調整できるなら長期保有を意識してみてください。
2. 年間の売却益を50万円以下に抑える
年間50万円の特別控除をフルに使う方法です。毎年少しずつ分割して売却し、各年の売却益を50万円以内に収めれば、譲渡所得税はゼロになります。2026年の金価格(1グラム26,000円前後)なら、売却量を調整して計画的に進めるのが有効です。
3. 所得が低い年に売却する
譲渡所得は総合課税なので、給与所得が少ない年(退職直後、育児休業中、年金受給開始後など)に売却すれば、累進税率の低い区間で課税されます。タイミング次第で税率が変わる点は覚えておいて損はありません。
4. 相続後3年10か月以内の売却で取得費加算の特例を使う
相続で取得した金を、相続開始日の翌日から相続税の申告期限(10か月後)の翌日以後3年を経過する日までに売却すると、支払った相続税の一部を取得費に上乗せできる「取得費加算の特例」(国税庁No.3267)が使えます。結果として譲渡益が圧縮され、税負担が軽くなります。
5. 購入時の書類を確実に保管する
取得費が証明できなければ、売却価額の5%しか経費にできません。購入時の領収書・計算書・取引明細は、金を手放すその日まで大切にとっておきましょう。
金投資の種類別:課税方式の違い
金への投資方法によって、課税の仕組みが異なります。
金投資口座や金貯蓄口座の利益は、金融類似商品の収益として一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の源泉分離課税です。現物の金地金とは課税方式がまったく異なるため、自分の投資方法に応じた税務処理を確認してください。
よくある質問(FAQ)
はい。年間の譲渡所得の合計が50万円以下であれば、特別控除によって課税されません。ただし、他の総合課税の譲渡益(骨董品など)と合算して50万円以下である必要があります。
200万円以下の取引では買取業者の支払調書提出義務はありませんが、税務署は他の方法でも情報を把握できます。申告義務があるのに申告しなければ、無申告加算税や延滞税を課されるリスクがあるため、売却額にかかわらず正しく申告してください。
個人が金地金を売却する場合、消費税の納税義務はありません。ただし、売却価格には消費税相当額が含まれて支払われるのが通常です。購入時に支払った消費税は取得費に含めて計算します。
生活用動産(1個または1組の価額が30万円以下の貴金属・宝石)の譲渡は非課税です。ただし、30万円を超える貴金属や宝石の売却益は譲渡所得として課税対象になります。
被相続人(亡くなった方)の取得費と取得時期を引き継ぎます。被相続人の購入価格がわかればそれを使い、不明な場合は売却価額の5%を概算取得費とします。
金地金の売却で生じた譲渡損失は、同じ年の他の譲渡所得(総合課税分)と通算できます。ただし、給与所得や事業所得など他の所得区分とは損益通算できません。金地金は「生活に通常必要でない資産」に該当するため、所得税法上、損益通算の範囲が制限されています。
確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日です。金の売却に関しては、売却時の計算書(取引明細)、購入時の領収書、本人確認書類(マイナンバーカードなど)を準備してください。e-Tax、郵送、税務署窓口のいずれかで提出できます。
純金積立で積み立てた金を現物で引き出してから売却した場合は譲渡所得です。一方、金投資口座の利益として受け取った場合は、金融類似商品として20.315%の源泉分離課税が適用されます。
まとめ:2026年の金売却は計画的に
2026年は金価格が過去最高水準で推移しており、売却を考えるにはよいタイミングです。ただ、税金のことを知らずに売ってしまうと、手取りが想定より大幅に減ることもあります。
押さえておきたいポイント
- 金地金の売却益は譲渡所得として総合課税の対象
- 年間50万円の特別控除を使えば、少額の売却益は非課税にできる
- 5年超の長期保有なら課税対象額が半分に
- 200万円超の売却では支払調書が税務署に提出される
- 取得費を証明できる書類は必ず保管しておく
計算が複雑な場合や、相続で取得した金の売却を検討している場合は、税理士に相談するのが確実です。正しい知識をもとに売却時期や金額を計画し、手取りを最大化しましょう。
免責事項: 本記事は2026年4月時点の税制に基づいて作成しています。税制は改正される場合がありますので、最新の情報は国税庁ホームページまたは税理士にご確認ください。